3S研究活動を通じて3S専門性を深めるために、3Sに関わる研究実施計画を学生自らが主体的に作成し、研究遂行並びに成果発表を支援する学生研究公募型の3S研究プロジェクトを実施しています。
AY2022
中小型炉は、分散型かつ安定的なエネルギー源として期待されており、固有安全を積極的に取り入れた原子炉である。他方、中小型炉に対して従来の大型炉と同等の規制が適用された場合、事業者側に過大な負担がかかることが懸念される。したがって、中小型炉に対する規制には、中小型炉の固有安全と核不拡散性に基づいた等級別アプローチ (Graded Approach) を取り入れることが重要である。そこで本研究では、事故耐性燃料の一つであるケイ化物燃料を中小型軽水炉に装荷した場合における、炉心核熱特性および核不拡散性を定量的に明らかにし、それらを活用した高い固有安全と核不拡散性を有する中小型軽水炉システム概念を提案すると共に、技術及び規制上の課題を明らかにする。
本研究では、核セキュリティ・保障措置における核物質の非破壊検知を目的に、新たに水チェレンコフ中性子検出器 (WCND) の開発を行う。これにより、近年価格高騰の著しいHe-3比例計数管に対し、圧倒的に低コストかつ高感度な中性子検出器を実現する。また、アクティブ中性子法装置と組み合せた実験も行い、既存手法では技術的に困難な、隠匿された数グラムオーダーの濃縮ウランの現場検知を実証する。
近年、社会的要請に応える可搬型原子炉の開発や炉心燃料の長寿命化が可能である点、Depleted Uraniumを含有したTRU燃料を使用可能であるという点から、長寿命ナトリウム冷却高速中小型炉が注目されている。しかし、可搬型原子炉は、従来の原子炉とは燃料を原子炉容器に挿入したまま、運搬を行うため、運用プロセスが大きく異なるという課題点がある。さらに、ATWS研究目的はATWS (Anticipated Transient Without Scram) に対応し、シビアアクシデントを防ぐ装置が大型高速炉用に開発されている。よって本研究の目的は、一つ目に、炉心の10年を超える長寿命化である。二つ目に、デバイスの中小型高速炉への適用効果を評価することである。三つ目に、可搬型原子炉輸送に関する課題検討することである。
本研究は、既往の原子炉と石油産業の浮体式プラットフォームを融合したものとして提案されている浮体式洋上原子力発電 (OFNP) について、これまで十分に検討されていなかった核不拡散性と核セキュリティについて、洋上特有の長所短所も踏まえて、その特性を明らかにするとともに実現可能性を評価することを目的としている。なお、OFNPは米国マサチューセッツ工科大学のM. Golay教授らが提案し、日本の産業競争力懇談会 (COCN) にて更なる検討が進められており、沖合30km の立地を想定している。そのため、水深が深い洋上に位置するため、津波と地震の影響を低減し、周囲にある大量の海水を動力無しに原子炉からの崩壊熱除去に利用可能であるとともに、陸地から離れた沖合に位置するため事故時の住民避難の負担を軽減可能である。
本研究は、高温ガス炉の核特性を活かして経済性と核不拡散性を向上させるために新たな燃料装荷法を開発することを目的としている。提案する高温ガス炉の燃料装荷法では、炉心を2種類の中性子スペクトルの燃料領域に分け、それぞれ「基準燃焼領域」、「延⾧燃焼領域」と名付ける。基準燃焼領域では、新燃料が装荷され元の炉心設計によって決められた基準燃焼度まで照射される。基準燃焼度まで照射された照射済み燃料を新燃料領域から延⾧燃焼領域に移動させ再燃焼させる。延⾧燃焼領域の中性子スペクトルは新燃料領域より熱中性子の割合が高いため、照射済み燃料は延⾧燃焼領域に装荷されることで炉心全体の臨界性への影響が少なくさらに燃焼度を上げることができる。この装荷法によって燃料の炉内滞在時間(バッチ数)が増え、核分裂性核種をより効率的に利用し使用済み燃料に残存する核分裂性核種を減らせることができる。
放射線の⽣体への影響は主としてDNA損傷によるものと考えられ、DNA⼆本鎖切断は種々のDNA損傷の中で最も重篤なものと考えられる。DNA⼆本鎖切断をはじめとするDNA損傷の修復機構の分⼦レベルでの理解は、放射線によるがん治療や放射線防護・安全管理の重要な基礎である。APTX (アプラタキシン) はDNAの5’末端からアデノシン⼀リン酸を取り除く酵素であり、遺伝性疾患である眼球運動失⾏と低アルブミン⾎症を伴う早発型失調症 (AOA1/EAOH)の患者で変異が認められる。APTX は塩基除去修復、DNA⼀本鎖切断修復に関わることが明らかになっているが、DNA⼆本鎖切断修復への関与は明らかになっていない。本研究は、APTXがDNA⼆本鎖切断修復に関わるか、また、関わる場合にはそのように関わるかを明らかにすることを⽬的としている。